新築住宅は長期優良住宅にするべき?住宅性能評価とは?

長期優良住宅

化粧垂木の大屋根の長期優良住宅

注文住宅を建てる場合には、長期優良住宅の基準を参考にすることによって、長く住み継ぐ、高い住宅性能を持つ家にすることができます。一方、住宅の耐震性や断熱性など住宅に求められる性能を、確認するために活用されてる制度が、住宅性能評価です。どちらも、快適に長く暮らすためには欠かせない「住宅が備えなくてはならない要素」に対する基準が定められています。

住宅に必要な要素の中には、目に見える部分と目に見えない部分があります。外観や内装、間取りなど目に見える部分と、地震への備えがあることや、快適な室温を最小限のエネルギーで維持できること、などを支える目に見えない部分です。

そのどちらも、住宅には欠かせない要素ですが、目に見えない部分は、暮らし始めてみないと、判断できません。その為、目に見えない部分に対しては、専門知識のない一般の人々が、家を建てたり、購入したりする際の指針とできるように、このような基準が定められています。

それでは、この2つの制度はどのような特徴があるのでしょうか?注文住宅を建てる場合、どのように利用すれば良いのか、考えていきましょう。

長期優良住宅と住宅性能表示制度の意味

100年住宅を目指した家

100年住宅を目指した家

日本では戦後、長年に渡り、「作っては壊す」という住宅を、大量に作り続けてきました。その結果、少子化という問題と相まって、空き家が増え、社会問題にもなっています。空き家が増えてしまった理由には、家を継ぐ子供がいないというケースもありますが、子供がいるのに親の残した家に住まない、というケースも多くあります。そして、子供がいるのに親の残した家に住まないという理由の中には、立地条件が暮らしに合わない、という理由もありますが、現代の生活に合わないという理由もあります。

現代の生活に合わないと理由としては、生活様式が変わり、古い家には現代人の求める快適性がないということが考えられます。家族関係が変わり、家にいる時間は、家族の誰もがリビングで過ごす、というライフスタイルが定着してきたため、居室が細かく分かれている家から、広いリビングのある家へと、好まれる間取りが変わってきました。今後は、コロナの影響で増え続けているリモートワークが、定着するかもしれず、そうなった場合には、ワークスペースのある間取りが増えてくるかもしれません。

もし、可変性のある住宅であったならば、ライフスタイルの変化に応じて、暮らしやすい家に変えることができたかもしれず、そうなれば、子供が親の家を受け継いだかもしれません。

また、手入れがしにくい家も多くありました。住宅の構造躯体は非常に丈夫に造られていて、耐用年数が長いのですが、屋根、壁、内装、住宅設備機器、配管などは、構造躯体ほどの耐用年数がありません。その為、屋根裏や床下、配管などの点検や補修がしやすい状態になっていることや、点検計画が作成されていることが、長く良いコンディションを保つためには必要です。

残念ながら、現在、空き家になっているような古い家には、建てたら建てっぱなしという住宅が少なくありません。点検、補修をしようとすると、莫大な費用と手間がかかる為、放置されている状態です。古い家に住んでいる家族の中には、家を建てた家族でさえ、住宅を建てた建築会社の連絡先がわからなくなっている、という家も少なくないのです。もし、家を建てた会社との良好な関係が続いており、定期的に点検をし、必要があれば補修をするということを続けていれば、良い状態を維持できていたかもしれません。

家は良い状態を維持できれば、100年以上の耐用性があるのに、暮らしにくい家にしてしまうのは、とてももったいないことなのです。今後は、このような問題を持つ家を増やさない為、「誰もが快適に暮らせ、子や孫の代まで良いコンディションを維持できる家だけを造っていこう」という考えの基に定められた基準を満たす住宅を認定していくのが長期優良住宅制度です。

住宅性能表示制度は、家を建てる人や、分譲住宅や中古住宅を購入する人が、住宅の目に見えない部分を判断できるように定められた品確法に基づく制度です。品確法とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称で、平成12年に施工されました。

新築住宅に対しては、新築住宅の基本構造部分の瑕疵担保責任期間を「10年間義務化」する、分譲住宅や中古住宅に対しては、トラブルを迅速に解決するための「指定住宅紛争処理機関」を整備することも、基本方針です。

長期優良住宅と住宅性能表示制度の評価基準と項目

2階リビングの長期優良住宅

2階リビングの長期優良住宅

住宅性能表示制度における評価基準は、長期優良住宅の認定基準としても、活用されています。その部分を確認しておきましょう。

長期優良住宅では劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、高齢者等対策、可変性、省エネルギー性関して、住宅性能表示制度の基準をもとに、必要な性能を決めています。そして、長期優良住宅にはさらに独自の基準が定められています。

  1. 劣化対策=等級3+α
    床下空間の有効高さ確保及び床下・小屋裏の点検口設置など
  2. 耐震性=等級1+α
    耐震等級2、または、条件付きで1(倒壊等防止)
    または、品確法に定める免震建築物
  3. 維持管理・更新の容易性=等級3-α
  4. 高齢者等対策=等級3-α
  5. 可変性=躯体天井高さ2,650mm以上等
  6. 省エネルギー性(断熱性など)=等級4

住宅規模、居住環境の維持及び向上への配慮、建築後の住宅の維持保全、資金計画は、長期優良住宅独自の項目です。

  1. 住宅規模=戸建て住宅の場合は、床面積の合計が75㎡以上
  2. 居住環境の維持及び向上への配慮=所管行政庁判断
    周辺の景観と調和していること、地域の計画に沿っていること
  3. 建築後の住宅の維持保全=所管行政庁判断
    住宅の構造耐力上主要な部分、住宅の雨水の浸入を防止する部分、住宅に設ける給水又は排水のための設備に対する定期的な点検と補修の計画が策定されている、
  4. 資金計画=所管行政庁判断

空気環境、防犯、火災時の安全、音環境、光・視環境に関する住宅性能表示制度の項目は、長期優良住宅の認定基準には含まれておりません。

長期優良住宅と住宅性能表示制度で受けられる優遇措置

太陽光発電搭載の長期優良住宅

太陽光発電搭載の長期優良住宅

どちらにもそれぞれ優遇措置があります。優遇措置は家づくりのかかる費用の助けになります。

長期優良住宅で受けられる優遇措置

住宅ローンの控除、または投資型減税が受けられます。現在わかっている令和2年度の控除率を例に見ていきましょう。

<2021年12月31日までに入居した場合>

  1. 住宅ローンの控除
    一般住宅の場合、控除対象の借入限度額は4,000万円ですが、長期優良住宅は、5,000万円で、控除率はそれぞれ1%なので、控除額に1年あたり最大で10万円の差が出ます。どちらも控除期間は13年間ですから、一般住宅と長期優良住宅では、総計して最大130万円の優遇差になります。
  2. 所得税(投資型減税)
    標準的な性能強化費用相当額(上限:650 万円)の10%が、その年の所得税額から控除されます。

<2020 年3月31日までに入居した場合>

登録免許税: 税率の引き下げ

  1. 保存登記 0.15%⇒ 0.1%
  2. 移転登記 0.3% ⇒ 0.2%
  3. 不動産取得税:課税標準からの控除額の増額
    控除額1,200万円 ⇒ 1,300万円
  4. 固定資産税:減税措置(1/2減額)適用期間の延長
    1~3年間 ⇒ 1~5年間

長期優良住宅や住宅性能表示制度を利用して受けられる優遇措置

住宅ローンの金利引き下げ

<2020年3月31日までに申し込みをした場合>

住宅金融支援機構の【フラット35】Sは、住宅性能表示制度の性能等級を満たしている住宅が利用できる住宅ローンで10年間、フラット35に比べて,0,25パーセント金利が引き下げられます。住宅性能評価書を取得しなくても所定の物件検査に合格すれば、 【フラット35】S(金利Aプラン)を利用できます。

地震保険の耐震等級割引

住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく耐震等級(倒壊等防止)を有している建物であるという条件を満たした住宅は、等級に応じて、地震保険料が割引きされます。

参考サイト

東京海上日

損保ジャパン

2021年度には、優遇措置や金利引き下げの割合は、変わるかもしれません。コロナの影響も反映されるかもしれません。ただ、国が「個人の住宅の質を上げよう」としていることは確かなので、引き続き、優遇措置は取られると思われます。発表されましたら、こちらのコラムからも情報を発信いたします。

■ ■ ■

長期優良住宅と住宅性能評価は、どちらも質の高い住宅にするために役立つ基準です。ただし、やみくもに等級だけにこだわるという役立て方では、暮らしやすい住宅を造る上で、バランスにかける結果にもなってしまいます。
また、長期優良住宅で求めている性能は決して十分なものではありません。将来を見据え、しっかりと性能基準を検討し、設定していく必要があります。
基本は、家族の暮らし方と価値観、そして家づくりにかけられる予算です。その上で、長期優良住宅と住宅性能評価の基準を取り入れていくことが大切です。

蓮見工務店の家づくりへの想い

注文住宅,家づくり,設計

私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。

「熱を集め、移し、蓄える」

「風を通し、涼を採り、熱を排出する」

「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」

などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。

快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
全てのバランスで実現できます。

そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。
私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
お客様の一棟に全力をそそいでまいります。

注文住宅やリフォーム、リノベーション、店舗などの建築を
ご検討中の方には、これまでに携わったお宅をご見学していただけます。

「木造住宅の視覚的な心地よさ、
木にしか出せない香り、温かみのある手触り」

「木の心地よさと併せて太陽の光などを取り入れた、
パッシブデザインの良さ」

を感じて頂けます。

ご希望などございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

監修者情報

蓮見幸男

蓮見幸男

住まいの知恵袋、家づくり問題解決仕事人

住宅に関するさまざまな事柄(耐震・温熱・耐久性など)を計算やシミュレーションにより可能な限り〝見える化"し、安心・快適な唯一無二の住まいをリーズナブルにお届けしたいと考えています。

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