「廊下のない間取り」のメリット・デメリットと後悔&失敗しない設計ポイント

オープンな間取りで廊下のない家が増えています。
「廊下を作るべきか作らないべきか迷っている」「廊下のない家の長所短所を知りたい」という方も多いでしょう。
そこで今回は、「廊下のない間取り」のメリット・デメリットと、後悔&失敗しないための設計ポイント、おしゃれな事例を“建築士”が詳しく紹介します。
併せて、快適な家にするための住宅性能についてもお話しので、ぜひ最後までご覧ください。
● 「廊下のない間取り」には、事前に知っておいていただきたいデメリットや注意点があり、快適に暮らすためには断熱性・耐震性などに工夫が必要です。
●「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」は、「手作りの家」をモットーに埼玉県で高性能な住宅を数多く手がけています。
目次
「廊下のない間取り」のメリット

「廊下のない間取り」には、快適性や効率性におけるメリットがあります。
家族の気配を感じやすい
「廊下のない間取り」は、各居室や空間にアクセスする際に、LDKなどの共有スペースを通り抜ける間取りが大半です。
そのため、必然的に家族が顔を合わせる機会が増え、互いに帰宅・外出の気配を感じられます。
2階建ての家では、廊下の代わりに階段を上がった場所にセカンドリビングやフリースペースを兼ねたホールを作る間取りが人気です。
限られたスペースをフル活用できる
廊下に充てる空間を、LDKや収納、各居室などに活用できるため、限られたスペースを“生活に直結する空間”として無駄なく利用できます。
そのため、都市部に多い狭小住宅やミニマル住宅は、廊下がない(少ない)間取りがほとんどです。
室温のムラを軽減できる・空調効率が上がる
廊下があり各空間が区切られていると、冷暖房の風が廊下や階段まで行き渡りにくいですが、「廊下のない間取り」では空間がつながり、家全体を空調しやすくなります。
空調能力によっては、廊下・玄関に加えて、洗面脱衣室・浴室・トイレまで快適な室温に保てるため、ヒートショック※や室内熱中症※のリスクを軽減できる点もポイントです。
※ヒートショック:温度差が5℃以上ある場所を移動した際、急激な温度変化によって血圧が上昇下降して、めまいや心筋梗塞、脳卒中などを引き起こす健康被害
※室内熱中症:室内でエアコンなどをつけていても発症する熱中症で、めまい・頭痛や筋肉の痙攣などを引き起こす健康被害
空間が分断されずつながっている間取りは、断熱性能が高ければ、空調機器の台数を減らせる点や光熱費を節約することも可能です。
「廊下のない間取り」を全館空調システムと組み合わせる家も増えています。
▶︎おすすめコラム:“全館空調”はやめた方がいい?後悔しないために知るべきデメリットとその対策
生活動線・家事動線が短くなる
廊下がないと、各空間の距離が近くなり、生活動線や家事動線が短くなります。
家の中の動線が短くなると、家事の負担を軽減でき、効率的な暮らしを実現できるのです。
さらに、出入り口の幅や段差に配慮すれば、バリアフリーの側面でも有利になります。
そのため、「廊下のない間取り」は子育て世帯や、高齢の方がいる世帯にもおすすめです。
▶︎おすすめコラム:「子育てしやすい家」の間取りポイント25選|事例写真や補助金情報も
▶︎おすすめコラム:【建築士解説】車椅子で生活できるバリアフリーの新築住宅|間取りの工夫と注意点
室内の風通しが良くなる
廊下がなく回遊的な間取りは、壁で流れが妨げられにくく室内の空気がこもりにくい点もメリットです。
各居室のドアを通風ドア※にすれば、家族のプライバシーを確保しながら家全体の空気汚染(湿気や臭い)を防止できます。
※通風ドア:メーカーによっては採風ドアと呼び、ドアの一部にガラリやルーバーが付いていて、全閉した状態でも換気できる
家の奥まで採光しやすい
「廊下のない間取り」は、LDKなどの窓から差し込む太陽光を遮断せず、家の中央部まで採光できます。
大きな窓のない部屋や北側の部屋などには、間仕切り壁に室内窓※を取り付けると、日当たりが良い部屋の採光を引き込むことも可能です。
※室内窓:屋外に面した外壁ではなく、室内を区切る間仕切り壁に取り付ける窓で、採光・通風・デザイン性アップの効果がある

吹き抜けやハイサイドライト(高窓)を組み合わせると、より広範囲に太陽光が届き、日中は照明器具を使わなくても明るいスペースが広くなり、節電効果ももたらします。
▶︎おすすめコラム:【吹き抜けの窓】メリット・デメリットや大きさ、暑さ・寒さ対策について徹底解説
室内の死角が減る(防犯性・安全性アップ)
「廊下のない間取り」は、室内の中に目が届かない場所(=死角)が少ない点も特徴です。
限られた人しか在宅しない時間帯に、不審者の侵入に気がつきやすく防犯効果をもたらします。
また、小さいお子様・高齢の方がいる世帯では、視覚が少ないと家庭内事故のリスクを軽減できる点もポイントです。
▶︎おすすめコラム:【家の防犯対策20のポイント】土地選び・開口部・間取り・外構・設備の考え方
建築コストを抑えられる
「廊下のない間取り」は、壁量やドアの数が少なく、その分、材料費・施工費を削減できます。
廊下をなくしてシンプルでオープンな間取りにして、削減できた費用を住宅性能・設備機器・内外装のグレードアップに充てる方は少なくありません。
ただし、間取りや建物の規模によっては、内部の耐震壁や柱が減る分、十分な耐震性能を確保するために高耐力の梁が増えるなど、廊下がないからと言って必ずしもコストが安くなるとは限らないので注意が必要です。

「廊下のない間取り」のデメリットと対策

「廊下のない間取り」には、快適性や効率性においてメリットがある反面、建てる前に知っておいていただきたいデメリットもあるのでご注意ください。
間取りのレイアウトが限定される
「廊下のない間取り」は、生活動線や家事動線を考慮すると、必然的に空間同士のレイアウトが決まり、間取りが制限される可能性もあります。
自由なプランニングをしたい場合は、家の中心にフリースペースを設けるプランがおすすめです。
フリースペースは、以下のような活用方法があります。
- キッズスペース(遊び場・勉強スペース)
- セカンドリビング(来客時に家族がくつろぐスペース)
- ワークスペース(作業や打ち合わせスペース)
耐震計画に工夫が必要
「廊下のない間取り」は、廊下のある家と比べると壁や柱の数が少ないため、耐震性能が低くなる可能性があります。
開放的なプランや2階の荷重がかかる1階部分は要注意です。
そのため、廊下を作らない場合は、外壁や間仕切り壁の耐力壁を増やしたり、開口部(窓・ドア)のサイズや位置を細かく検討したりするなど、緻密な構造設計が求められます。
廊下が少なく地震に強い家を建てたい方は、2階の荷重負荷がかからない平屋建てもおすすめです。
▶︎おすすめコラム:「平屋はやめたほうがいい」は本当?12の理由と対策|2階建てと迷った時のチェックリストも
家族のプライバシーを確保しにくい
「廊下のない間取り」は、家族とコミュニケーションを取りやすい点がメリットである反面、お互いの気配が伝わってプライバシーを確保しづらい側面もあります。
各居室へ行く際に共用空間を必ず通らなければいけないと、早朝深夜の外出・帰宅が多い家では家族の迷惑になる点は否めません。
そのため、廊下を作らない場合は、家族構成とライフスタイル、日々のルーティーンを踏まえた間取りの検討が必要です。
来客動線と家族動線が交わりやすい
「廊下のない間取り」は、玄関からLDKが直接見える間取りも多く、また来客動線と家族動線が交わりやすい点には注意しましょう。
来客が多い世帯では、その間に家族が自由に家の中を行き来できなくなったり、くつろぐ場所がなくなったりする可能性が考えられます。
また、LDKとトイレが隣接しているプランでは、居心地の悪さを感じる方もいます。
「廊下のない間取り」で来客動線と家族動線を分けたい方は、以下の間取りがおすすめです。
- 家族用リビングとは別に来客用のスペースを設ける
- 玄関や階段、水回り空間をはさんで、左右に来客用・家族用スペースを分ける
- 庭からアウトドアリビング(ウッドデッキや土間)を通って、リビングに直接アクセスできるプランにする
▶︎おすすめコラム:【建築士解説】人気の“アウトドアリビング”は本当に快適なのか?後悔事例とその対策
臭いや生活音が広がりやすい
「廊下のない間取り」では、料理の匂いやその他の生活臭が家全体に広がりやすいので要注意です。
揚げ物などをした時に発生する油煙※も臭いの原因になります。
※油煙:油が200℃以上に達すると発生する微量の油滴を含む煙や湯気
臭い対策として、以下の設備を導入を検討しましょう。
- 高性能キッチンフード
- 室内の給排気量をコントロールできる第一種換気方式の24時間換気システム
▶︎おすすめコラム:【最新保存版】新築住宅の「いらない&よかった」オプション設備と間取り
廊下がなく部屋同士が隣り合うと、お互いの生活音が気になる可能性もあります。
音対策として効果的なのは、以下の方法です。
- 部屋と部屋の間に“緩衝帯”になる収納スペースを配置する
- 各居室(寝室・子供部屋)を並べずに離す
家の断熱性によっては冷暖房が効きにくくなる
「廊下のない間取り」は、1つの空間容積が大きくなり、冷暖房の効率が落ちる可能性があります。
吹き抜けやロフト、下がり天井のある家では、冬に暖房の熱が天井に溜まって足元が寒いケースも珍しくありません。
▶︎おすすめコラム:【吹き抜けのある注文住宅】メリット・デメリットやよくある後悔の理由、おしゃれな事例を解説
そのため、「廊下のない間取り」などオープンで開放的な間取りにする場合は、高断熱性能が欠かせません。
温まると上昇して冷えると下降する空気の性質を生かした床下エアコン・小屋裏エアコンもおすすめです。
▶︎おすすめコラム:床下エアコンを失敗しないためのポイントは?メリットについても詳しく解説
収納スペースが減る
「廊下のない間取り」では、一般的に廊下の途中・突き当たりに配置する収納スペースを作れません。
収納スペースが足りずにリビングや各居室が散らかってしまうケースもあるので注意が必要です。
廊下の収納を作れない代わりに、空間ごとの収納計画にこだわりましょう。
壁面収納や造作家具、ファミリークローゼットなどを組み合わせるプランがおすすめです。
▶︎おすすめコラム:【注文住宅】造作収納のメリット・デメリットと空間別施工事例
空間にゆとりがなくなる
「廊下のない間取り」は、空間デザインを間違えると狭く圧迫感のある印象になるので注意しましょう。
「廊下=無駄な空間・移動するためだけの空間」と思われがちですが、空間に“ゆとり”や“余白”をプラスする効果もあります。
廊下がなくても開放的な家にしたい方は、デザイン要素を詰め込みすぎず、木目やナチュラルカラーで統一するインテリアがおすすめです。
▶︎おすすめコラム:【建築士解説】無垢材の住宅|デメリットと床・家具・壁・天井に取り入れるための対策

「廊下のない間取り」を後悔&失敗しないための設計ポイント

「廊下のない間取り」を後悔・失敗しないためには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。
断熱性能にこだわる
家を丸ごと高断熱にすれば、空間がつながる「廊下のない間取り」は空調効率が上がり、少ない空調機器や消費エネルギーで快適な室温に保てます。
また、空調機器による過度な乾燥や空間ごとの室温ムラを軽減できるため、健康面でもメリットがあります。
▶︎おすすめコラム:“断熱等級”と“省エネ等級”それぞれの違いや関係性は?2022年改正についても
耐震性能にこだわる
柱や壁が少ない「廊下のない間取り」は、建物全体の耐久性を確保するために耐震性能にもこだわる必要があります。
間取りに合わせて個々に構造設計できる建築会社がおすすめです。
地盤調査や地盤改良、耐震・制振・免震を組み合わせた多角的なプランを提案できる会社に相談しましょう。
▶︎おすすめブログ:木造住宅の耐震と免震、制振の最適解とは!?
高断熱(省エネ)で高耐震の家で、長期優良住宅の認定を受ける事例も増えています。
▶︎おすすめコラム:長期優良住宅の後悔理由と対策|知っておくべきメリット・デメリットを徹底解説
将来的なリノベーション(リフォーム)も想定する
「廊下のない間取り」を建てる際には、将来的な家族構成やライフスタイルの変化に伴う間取り変更も想定しておきましょう。
間仕切り壁を増やしたり減らしたりする可能性がある場合は、それを踏まえた間取りをご検討ください。
新築もリノベーションも手がける建築会社に相談するのもおすすめです。
施工事例(作品紹介)のページでは雑誌掲載事例を多数紹介していますので、ぜひご覧ください。

「廊下のない間取り」のおしゃれな事例
蓮見工務店は、平屋建て・2階建ての「廊下のない間取り」を手掛けてきた実績があります。
その中から一部を抜粋し、間取りやデザインのポイントを紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
平屋建て

こちらは、ロフト付き平屋建て住宅の事例です。
玄関から土間仕上げのパントリーを通って直接アクセスできるキッチンと、玄関まで採光できるガラス戸で区切られたリビングダイニングスペースにこだわりました。
リビングからは廊下を介さず寝室にアクセスできるため、家の中の動線はシンプルでコンパクトな点も魅力です。
ロフト階段も兼ねた造作収納や、読書はパソコン作業をしたり寝転んでくつろいだりできる小上がりは、狭小住宅の間取りアイデアとしてご好評いただいています。
2階建て

こちらは大きな開口のある吹き抜け空間が魅力的な2階建ての事例です。
家の中央に吹き抜けのあるLDKを配置し、1階・2階のどちらもその両側に居室などを配置しました。
廊下を出来るだけ作らない代わりに、吹き抜け部分には透け感のあるすのこ状の通路を配置して、窓からの採光を妨げず、さらに上下でご家族が会話を楽しめる間取りにした点がポイントです。

こちらの事例は、中庭をコの字型に囲う2階建ての事例で、玄関ホールからLDKに直接アクセスできます。
LDから中庭を挟んで反対側には和室を配置し、2階にはリビング階段からアクセスできます。
リビング階段を採用すると、階段上が吹き抜けと同じような効果を生み出し、さらに別で階段室を作る必要がないため、無駄のない空間活用が可能です。
▶︎おすすめコラム:「リビング階段をやめてよかった」と思う理由|デメリット・対策や後悔しないための間取りポイントを解説
《家づくりのプロ》である私たち工務店と、《生活のプロ》であるお客様の知恵を融合し、「最高の家づくり」を目指します。

「廊下のない間取り」に関する“よくある質問”

ここでは、「廊下のない間取り」について多くの方からいただくご質問を紹介します。
Q.「廊下のない間取りは30坪だと何部屋作れる?」
A.「延べ床面積が30坪あれば、3LDKの家を建てられます。」
これから敷地や間取りを検討する方は、以下の面積目安を参考にしてください。
延べ床面積を30坪確保できれば、3LDK+α(書斎・フリースペースなど)も可能で、20坪でも2LDKの家は建てられます。
空間用途 | 広さの目安 |
---|---|
寝室(6畳) | 3坪/室 |
寝室(8畳) | 4坪/室 |
LDK | 8〜10坪 |
トイレ | 0.5〜1坪/室 |
洗面脱衣室 | 1〜1.5坪/室 |
浴室 | 1坪 |
玄関 | 1〜1.5坪(玄関収納含む) |
収納 | 全体の10〜20%程度 |
階段 | 1坪(2階建てにする場合のみ) |
▶︎おすすめコラム:【永久保存版】平屋住宅は何坪必要?家族構成・間取り・土地の広さから知る床面積の目安を求める方法
Q.「廊下のない間取りは風水的に問題ない?」
A.「廊下のない間取りは風水的にメリットとデメリットの両方があるとされています。」
「廊下のない間取り」は、玄関から入るネガティブな“気”(煞気[さっき])がLDKなどに流れ込みやすいとされ、壁やドアがないと風水的には良くないと判断される可能性があります。
ただし、その反面で空間がつながっていると、家族のコミュニケーションが活発になり絆が深まり、良い“気”が家全体に巡るというポジティブな側面もあります。
このように、風水は考え方次第なので、詳しく知りたい方は専門家にご相談ください。
まとめ

「廊下のない間取り」には、快適性や効率性、コスト面においてメリットがあります。
ただし、事前に知っておいていただきたいデメリットや注意点もあるため、設計施工事例のある建築会社に相談するのがおすすめです。
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