【建築士解説】北側のリビングはダメ?メリット・デメリットと後悔しないための間取りポイント

「北側にリビングを作ると後悔しそうで心配」「どの方角にリビングを配置するか迷っている」という方のために、北側リビングのメリット・デメリットと間取りのポイントを建築士が徹底解説します。
土地選びのコツも紹介しますので、ぜひ最後までごらんください。
● 北側リビングのメリット・デメリットや間取りのポイントを押さえて、予算・家族構成・ライフスタイルにフィットする間取りを検討することが重要です。
●「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」は、“手作りの家”をモットーに埼玉県で高性能な住宅を数多く手がけています。
目次
どんな土地だと北側(北向き)リビングになる?

リビングの方角は、土地の形状や前面道路との位置関係によってある程度決まります。
北側にリビングを配置することになる土地は、主に以下の特徴に当てはまる場合です。
- 敷地の南側が道路に接している
- 敷地の南側に隣家やその他建物との距離が空いていない
- 敷地の北側が道路に接していて視界が開けている
- 敷地北側の眺望が良い(開放的)
このような土地は無理に南側にリビングを設けるよりも北側に開けた間取りの方が快適な住まいになる可能性があります。
「北向きのリビングは良くない」「南向きのリビングが良い」と決めつけず、土地の特性に合わせて柔軟に間取りを検討しましょう。

北側リビングのメリット

北側リビングは一般的にあまり良くないとされていますが、メリットもあります。
北向きの土地は価格が比較的安い
北側に開けた土地は比較的土地の価格が安いという点は重要なメリットです。
実際に2024年に売買された住宅地※の方角別坪単価を見ると、北側リビングになりがちな南面道路の土地はリーズナブルなことが分かります。
※埼玉県内で市道・県道に面している物件に限定
前面道路の方角 | 坪単価 |
---|---|
東面道路 | 665,087円/坪 |
西面道路 | 624,656円/坪 |
北面道路 | 625,359円/坪 |
南(南東・南西)道路 | 614,766円/坪 |
日差しが強すぎない・暑くなりにくい
外壁面(垂直面)が受ける日射量を方角別に比較すると、春(春分)・夏(夏至)・秋(秋分)・冬(冬至)全ての季節で北側が最も少ないことが分かります。
そのため、日差しによって室温が高くなるリスクを抑えられることから間取りに北側リビングを採用するケースも少なくありません。
季節 | 終日日射量 |
---|---|
春分 | 南面>東西面>北面 |
夏至 | 東西面>南面>北面 |
春分 | 南面>東西面>北面 |
冬至 | 南面>東西面>北面 |
家具や内装材が劣化しにくい
北側は室内に差し込む日射量が少ないため、紫外線によって家具やフローリングなどの内装材が劣化するリスクを抑えられます。
ただし、北側リビングでも窓から入る紫外線が全くない訳ではないため、杉材など変色しやすい樹種の内装材を採用する場合は注意しましょう。
その他の空間を南側にできる
ご家庭によってはリビングよりもダイニングや書斎、子供部屋などの方が滞在時間が長い場合もありますが、北側にリビングを配置するとそれらの空間を南向きなど好条件の場所に配置できます。
実際に豪雪地帯では玄関を南向きにして雪が太陽光ですぐに溶けるようにするなどの工夫がなされています。
庭などの景色がきれいに見える
北側リビングは、庭の風景や借景を楽しみたい人におすすめです。
なぜなら、北側に開かれた窓から外を見ると、強すぎない順光※によって、樹木や植栽などの色や形が鮮明に見えるためです。
そのため、リビングから景色を眺めながらのんびり過ごしたい方からも北側リビングは注目されています。
※順光:風景(庭)に対し、見る側(人)の方向から光が当たる状態

北側リビングのデメリット・注意点

北向きのリビングは予算面や快適性においてメリットがある一方で、家を建てる際には事前に知っておいた方が良いデメリットもあるので注意しましょう。
採光を工夫しないと暗い
北側のリビングは日射量が少ないため、必然的に採光量も少なくなります。
建築基準法で定められている採光面積※をクリアしていても明るいとは限らないため注意しましょう。
※採光面積:居室の用途に応じて床面積の1/5〜1/10以上の面積をクリアした窓を設けなくてはいけない規定(参考:建築基準法第28条)
十分な明るさを確保するためには、より多くの光を取り込める高窓(ハイサイドライト)がおすすめです。
▶︎おすすめコラム:【吹き抜けの窓】メリット・デメリットや大きさ、暑さ・寒さ対策について徹底解説
日射取得量が少なく寒い
北側リビングは、窓からの日射取得量が少ないので夏の暑さ対策として有効ですが、冬には太陽熱を取り込めずパッシブデザイン※には不向きと言わざるを得ません。
※パッシブデザイン:電力・ガスなどのエネルギーを消費する設備機器に頼らず、太陽光・自然風・地熱などの自然エネルギーを遮断・取得して、快適な住環境を作り出す設計手法
最近は高断熱住宅が増え、太陽熱を取り込まなくても寒く感じない家も多いですが、リビングに面したウッドデッキやアウトドアリビングには影響があるので注意しましょう。
▶︎おすすめコラム:環境配慮型“パッシブデザイン住宅”の建てる前に知っておくべき注意点
湿気がこもりやすい・外干しの洗濯が乾きにくい
日の当たる時間が短い家の北側は、湿気がこもりやすいため以下の点に注意が必要です。
- ウッドデッキや濡れ縁などの木部が、木材腐朽菌・シロアリの影響を受けやすい
- 外壁に藻やカビが繁殖しやすい
- 板張り外壁にカビや木材腐朽菌、シロアリが繁殖しやすい
- 庭の植栽が育ちにくい可能性がある
敷地の広さや周囲環境によって適した間取りは異なりますので、完全自由設計が可能な建築会社に相談することをおすすめします。

方角別リビングの特徴

北側リビングとその他の方角を向くリビングで迷った際には、それぞれの特徴を押さえておきましょう。
南側(南向き)リビング
- 日光が他の建造物に遮断されにくい
- 庭やリビングの日当たりが良い
- 日差しによってリビングが暖まりやすいので、暖房のための電気代を抑えられる
- 資産価値が高い(人気が高い)
- 一般的には日当たりの良い土地は人気があり、価格も高め
- 太陽の光で家具や床のフローリングなどが日焼けしやすい
西側(西向き)リビング
- 夕方以降も日当たりが良い
- 季節によっては西日がまぶしかったり、夏場は夕方になっても室温が下がらず暑い
- 朝は日差しが入らない
東側(東向き)リビング
- 朝方の日当たりが良い
- 窓から朝日が入るので、午前中気持ちよく過ごせる
- 午後は日の光が入らないので家の中が暗くなる可能性がある
- 夏は暑さを避けられるが、冬や夜は部屋が冷えやすい
北側リビングを後悔しないための間取りポイント

「土地の条件で北向きのリビングにせざるを得ない」「リビング以外の部屋を南側に配置したい」というような方は、以下のポイントを押さえて建築会社と間取りのプランをじっくりご検討ください。
- 高窓(ハイサイドライト)を採用し、効率的に採光を確保する※
- 窓・床・壁・屋根など外皮※の断熱性を高めて寒さ対策をとる
- リビングが最も滞在時間の長い空間とも限らないため、ライフスタイルに合わせて空間の優先順位をつける
- 北向きでも建物との距離が離れていると日射を受けやすいため、隣家との距離が空く郊外がおすすめ※
※天窓(トップライト)も採光効率が良いですが、雨漏りのリスクがあるので採用する際は要注意です。
※外皮:建築物の屋外と室内を隔てる境界部分
※都市部などの住宅密集地では、北側リビングにすると日中ほとんど日差しが入らない可能性があるので注意しましょう。
「30年後もしみじみ“良い家”だと思える家づくり」をお手伝いいたします。
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まとめ

北側リビングは一般的にあまり良くないと言われていますが、全てのご家庭にとってそうとは限りません。
メリット・デメリットや間取りのポイントを押さえて、予算・家族構成・ライフスタイルにフィットする間取りを検討しましょう。
何十年も安心安全に住める家を建てたい方は、「土地選び・間取りのプラン・住宅性能」の全てにこだわることが重要です。
デザインと性能、快適さの全てを持ち合わせた家を埼玉県で新築・リノベーションしたい方は、注文住宅の事例が豊富な「蓮見工務店」にお任せください。
