「GX志向型住宅」の条件と「子育てグリーン住宅支援事業」申請のコツ|長期優良住宅・ZEHとの違いも解説

2025年に家を建てる方におすすめの補助金が「子育てグリーン住宅支援事業」で、最も多く補助金をもらえるのが「GX志向型住宅」の条件を満たした家です。
ただし、GX志向型住宅として認められ、さらに補助金の対象となるためには、いくつもの条件を満たす必要があります。
そこで今回は、「GX志向型住宅」の条件と長期優良住宅・ZEHとの違い、子育てグリーン住宅支援事業の詳細について、建築士が解説します。
GX志向型住宅のメリット・デメリットも紹介しますので、これから家を建てる方はぜひ参考にしてください。
● GX志向型住宅の認定を受けるためには、主に住宅性能に関する条件をクリアする必要があります。
● GX志向型住宅で子育てグリーン住宅支援事業の補助金を受け取りたい方は、敷地・申請者・建築時期の条件もチェックしましょう。
●「蓮見工務店 + 蓮見建築設計事務所」は、“手作りの家”をモットーに埼玉県で高性能な住宅を数多く手がけています。
目次
GX志向型住宅とは

GX志向型住宅とは、2025年に実施されている「子育てグリーン住宅支援事業」の対象住宅を表すキーワードとして新たに設けられた住まいのスタイルです。
GXはグリーントランスフォーメーション (Green Transformation)の略称で、「温室効果ガス排出量削減(環境負荷削減)」と「経済成長」の両立を実現させるための取り組みを指し、様々な分野で変革が進んでいます。
(参考:住宅省エネ2025キャンペーン|GX(グリーントランスフォーメーション)について)
高いエネルギー効率と環境負荷軽減によって、従来の省エネ住宅である「ZEH」や「長期優良住宅」よりもさらに省エネ効果が高く、快適でサスティナブルな暮らしを実現できます。
性能基準|断熱・省エネ・太陽光
GX志向型住宅として認定を受けるためには、主に以下3つの性能条件を満たす必要があります。
- 「断熱等級6」以上(UA値※:Ⅳ地域の場合は0.46以下)であること
- 「再生可能エネルギーを除く一次エネルギー※消費量の削減率が35%」以上であること
- 「再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率が一般地は100%、寒冷地・低日射地域等は75%以上」であること※
※UA値:外皮平均熱貫流率を表す値で、住宅の外皮(壁・屋根・床・窓など屋内外の境界部分)からどれだけ熱が出入りしやすいかを示す。数値が低いほど断熱性が高い。
※一次エネルギー:石油、石炭、天然ガス、原子力などの自然から直接採取するエネルギー。一次エネルギーを変換・加工して得られる電力やガス、ガソリンなどを二次エネルギーと呼ぶ
※都市部狭小地・多雪地域等は再生可能エネルギー未導入でも認定可能。
ここで言う再生可能エネルギーとは、太陽光パネルによる発電エネルギーを指します。
つまり、原則として太陽光パネルの設置が求められるということです。
認定制度が発足した当初、GX志向型住宅には太陽光パネル(4.5kw以上)の設置が必須条件となる予定でした。
しかし、都市部狭小地や多雪地域では初期投資に見合う発電量を見込めない可能性があることから、最終的には一定の条件を満たす敷地において、太陽光パネルの設置が任意となり、実質ZEH Oriented※でも認定される可能性があります。
※ZEH Oriented(ゼッチオリエンテッド):「ゼロ・エネルギー・ハウス指向型住宅」を意味する言葉で、都市部狭小地等において、外皮の高断熱化と高効率省エネルギー設備を備えた住宅。
(参考:資源エネルギー庁|ZEHの定義(改定版)〈戸建住宅〉)
GX志向型住宅の性能基準を満たしているかどうかの証明書には、BELS評価書※が用いられます。
※BELS評価書:建築物省エネルギー性能表示制度の略称で、建物の省エネルギー性能を第三者評価機関が評価・表示する制度
(参考:環境省|「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」ってなに!?)
併せて、認定審査の際には一次エネルギー消費量基準を満たしているかの数値確認が発生するため、施主支給のエアコンや照明器具などの性能についても事前打ち合わせする必要があります。
2025年2月の追加条件|HEMSの導入
2025年2月7日にGX志向型住宅に関する詳細な資料が公表され、認定条件に断熱性・省エネ性・太陽光パネルの設置以外に「HEMSの導入」が追加されました。
HEMSとは、Home Energy Management Systemの略称で、家庭内のエネルギー使用状況を「見える化」できる設備です。
GX志向型住宅の認定条件には、「高度エネルギーマネジメントシステムによる制御」と表記されていますが、分かりやすく言うと“省エネで快適な暮らしの実現をサポートするシステム”となります。
(参考:子育てグリーン住宅支援事業|高度エネルギーマネジメントについて)
電気、ガス、水などの使用量と太陽光発電量をリアルタイムでモニタリングでき、さらにHEMSのコントローラーやスマートフォンから、家電製品(エアコン・照明など)を遠隔で操作できる画期的なシステムです。
HEMSによって、設定した目標値とエネルギー使用状況を踏まえた最適な省エネプランが提案されます。
ただし、GX志向型住宅の認定を受けるためには、ECHONET Lite認証※・AIF認証※を受けたHEMS関連機器を選定する必要があるので注意しましょう。
※ECHONET Lite認証:家庭内機器をホームネットワークを用いて相互接続できる規格への適合性を認める制度で、2025年時点で火災センサー・人感センサー・エアコン・照明機器など、100種類を超える住宅設備機器や家電製品が認定を受けている。
※AIF認証:エネルギーマネジメント上重要な特定機器(スマート電力量メーター・家庭用エアコン・照明機器・給湯器(ヒートポンプ給湯器含む)・太陽光発電・家庭用蓄電池など)とHEMSコントローラとの通信仕様に関する認定制度。

GX志向型住宅と長期優良住宅・ZEHとの違い

子育てグリーン住宅支援事業の補助対象は、GX志向型住宅だけではありません。
GX志向型住宅と同じく省エネ性の高い長期優良住宅・ZEH水準住宅も対象です。
ただし、それぞれ住宅性能などに違いがあります。
GX志向住宅の断熱性能・省エネ性能・再生可能エネルギー設備に関する条件と、それぞれの基準(戸建住宅)を比較してみましょう。
【GX志向型住宅の性能基準】
断熱性能 | 断熱等級6以上 |
省エネ性能 | ・再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量の削減率が35%以上 ・再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率が一般地は100%、寒冷地・低日射地域等は75%以上 |
再生可能エネルギー | 一部の地域・敷地を除いて、原則として太陽光パネルの設置必須 |
長期優良住宅
長期優良住宅とは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」を指し、断熱性・省エネ性以外に、耐震性や維持管理性など多岐にわたる認定条件があります。
(参考:国土交通省|長期優良住宅のページ)
断熱性能 | 断熱等級5以上 |
省エネ性能 | 一次エネルギー消費量等級6以上 (再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量の削減率が20%以上) |
再生可能エネルギー | 任意 |
▶︎おすすめコラム:長期優良住宅の後悔理由と対策|知っておくべきメリット・デメリットを徹底解説
ZEH水準住宅
ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、「外皮の高い断熱性能」「高効率な設備システムによる大幅な省エネルギー」「再生可能エネルギー(創エネ)」によって年間の一次エネルギー消費量を“プラスマイナス(収支)ゼロ”にすることを目指す住宅です。

ZEHに対して「ZEH水準住宅」とは、再生可能エネルギー(太陽光発電)の導入は必須条件に含まれず、「外皮の高い断熱性能」「高効率な設備システムによる大幅な省エネルギー」のみを取り入れた住宅を指します。
断熱性能 | 断熱等級5以上 |
省エネ性能 | 一次エネルギー消費量等級6以上 (再生可能エネルギーを除く一次エネルギー消費量の削減率が20%以上) |
太陽光発電 | 任意 |
そのため、子育てグリーン住宅においては多くの補助金が支給されます。

「子育てグリーン住宅支援事業」におけるGX志向型住宅の補助金額と申請条件

子育てグリーン住宅支援事業は、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、物価高騰の影響を特に受けやすい子育て世帯・若者夫婦世帯を対象に、高い省エネ性を持つ高性能住宅の購入サポートを目的とした補助金事業です。
GX志向型住宅には長期優良住宅・ZEH水準住宅よりも高い認定基準が設けられているため、補助金額にも差があります。
補助金額・予算上限
補助対象住宅 | 1戸あたりの補助額 | 建て替え時※の補助金加算額 |
---|---|---|
GX志向型住宅 | 160万円 | なし |
長期優良住宅 | 80万円 | 20万円 |
ZEH水準住宅 | 40万円 | 20万円 |
ここで重要となる注意点は、期間ごとに予算上限が設けられている点です。
第Ⅰ期:2025年5月14〜31日
第Ⅱ期:2025年6月1~30日
第Ⅲ期:2025年7月1日~12月31日(予算上限に達した時点で終了)
交付申請期間 | 第Ⅰ期 | 第Ⅱ期 | 第Ⅲ期 |
---|---|---|---|
GX志向型住宅 | 上限額 150億円 | 上限額 150億円 | 上限額 200億円 |
長期優良住宅 ZEH水準住宅 | 上限額 300億円 | 上限額 300億円 | 上限額 300億円 |
2023〜2024年に実施されたこどもエコすまい支援事業は、総予算額が決まっていてそれに達するまでであれば補助金申請できましたが、子育てグリーン住宅支援事業は“期ごと・住宅種別ごと”に予算上限が決まっているので注意しましょう。
対象条件
グリーン子育て住宅支援事業(新築)の補助金対象となるためには、「GX志向型住宅・長期優良住宅・ZEH水準住宅」いずれかを建てることが第一条件です。
その上で、申請者の年齢や施工会社などに関する条件があります。
申請者の年齢とお子様の有無
補助対象住宅 | 申請者の条件 |
---|---|
GX志向型住宅 | 年齢・お子様の有無に関する条件なし (全ての世帯が対象) |
長期優良住宅 ZEH水準住宅 | 子育て世帯※または若者夫婦世帯※であること |
※子育て世帯:補助金申請時点において、お子様(2024年4月1日時点で18歳未満=平成18(2006)年4月2日以降の出生)を有する世帯。ただし、2025年3月末までに建築着工する場合は、2023年4月1日時点で18歳未満(=2005年4月2日以降の出生)お子様であることが条件。
※若者夫婦世帯:補助金申請時点において既に夫婦であり、いずれかが若者(2024年4月1日時点で39歳以下(=1984年4月2日以降の出生)である世帯。ただし、2025年3月末までに建築着工する場合は、2023年4月1日時点でご夫婦いずれかが39歳以下(=1983年4月2日以降の出生)であることが条件。
(参考:子育てグリーン住宅支援事業)
建築会社の選定
子育てグリーン住宅支援事業は、事務局に事前登録された「グリーン住宅支援事業者」に建築を依頼することが条件です。
そのため、登録事業者でない建築会社にGX志向型住宅などの建築を依頼しても補助金を受け取れないので注意しましょう。
グリーン住宅支援事業者は、建築主(施主)に代わって交付申請等の手続きと補助金の受領を行い、その後、補助金を建築主に還元します。
新築工事期間
子育てグリーン住宅支援事業は「2024年11月22日以降に基礎工事以後の工程に着手済みであること」が条件です。
2024年11月21日時点で、着手していても良い工事とそうでない工事は以下の通りです。
2024年11月21日時点に着手済みでも補助対象となる工事 | 杭工事 基礎工事 地下室関連工事 基礎断熱工事 足場等の仮設工事 給排水・電気工事 外構(エクステリア)工事など |
2024年11月21日時点に着手済みでは補助対象“外”となる工事 | 地上階の柱・壁・梁設置 屋根工事 |
契約時期は問われませんが、建築着工までに建築会社と工事請負契約が締結されている必要があります。
そして、建築着工から交付申請(遅くとも2025年12月31日)までに、補助金額以上の出来高工事が完了していることも条件なので注意しましょう。
確実に補助金をもらうために、建築会社と工程に関する綿密な打ち合わせをしておきましょう。
その他の条件
- 所有者(建築主)自らが居住※すること
- 住戸の床面積※が50㎡以上240㎡以下であること
- 住宅の立地が除外要件※に含まれないこと
- 未完成または完成※から1年以内であり、居住用として使用していないこと
- 交付申請時、基礎工事より後の工程の工事出来高が、補助額以上であること
※居住:住民票における住所(居住地等)で確認
※床面積:建築基準法における床面積が基準(参考:国土交通省|床面積の算定方法)
※除外条件:土砂災害特別警戒区域・災害危険区域(急傾斜地崩壊危険区域または地すべり防止区域と重複する区域)・市街化調整区域内で土砂災害区域もしくは浸水想定区域に該当する区域に含まれる土地か、都市再生特別措置法第88条第5項に基づき申請者が同条第3項による勧告に従わなかった住宅(参考:子育てグリーン住宅支援事業|新築住宅の立地等の除外要件)
※完成:建築基準法に基づく検査済証の発出日で確認
そのため、確実に補助金を貰いたい方は、省エネ住宅の設計施工と補助金申請サポートの実績が豊富な建築会社に相談しましょう。

GX志向型住宅のメリット・デメリット

GX志向型住宅は新たに生まれた省エネ住宅のかたちです。
そのため、これからGX志向型住宅を建てたい方は、メリット・デメリットを事前にチェックしておきましょう。
メリット
GX志向型住宅のメリットは、「子育てグリーン住宅支援事業」で補助金をもらえるだけではありません。
- 補助金が高くなる
- 住宅ローン減税の対象となる借入上限額がZEH水準住宅よりも引き上げられる(最高5,000万円)
- 高い断熱性と太陽光発電やHEMSによって、光熱費(電気料金)を削減できる
- 健康的で快適な暮らしを実現できる(室温ムラがなくなり、空調機器へ依存しなくて済むため室内の空気環境が良くなる)
- 環境に配慮した持続可能な住宅となる
- 災害時や停電時でも自宅避難が可能となる(最低限の電気を継続的に使用できる)
- 住宅の資産性向上を期待できる(今後、中古住宅におけるGX志向型住宅のニーズが高まる可能性がある)
このように、GX志向型住宅には、環境面や生活面、資産性においてメリットがあります。
デメリットと対策
GX志向型住宅には多方面でのメリットがある反面、建てる前に知っておいていただきたいデメリットもあるので注意しましょう。
- 新築コストが高い(高性能な断熱材や再生可能エネルギー設備の導入が求められるため、初期コストが高くなる)
- GX志向型住宅にすることで受け取れる補助金額や減税額よりも、新築コストで上乗せされる額の方が大きい

GX志向型住宅は、住み始めてからの光熱費削減効果や快適性、防災性など総合的なメリットを目的に新築しましょう。
- 必要な太陽光パネルを設置するための屋根面積が必要(複雑な屋根形状や狭小地、コンパクトな2階建て住宅は要注意)
- 立地条件によっては太陽光発電効率が低い

GX志向型住宅で太陽光パネルの設置が義務にならないのは、「寒冷地(省エネ基準における地域区分において、1・2地域に該当する地域)」「低日射地域(省エネ基準における年間の日射地域区分において、A1・2に該当する地域)」のみです。
そのため、それ以外の地域でGX志向型住宅を建てる場合は、太陽光発電を導入した住宅の設計・施工実績が豊富な建築会社に相談しましょう。
立地環境によっては、太陽光発電の導入が義務ではない長期優良住宅・ZEH水準住宅の方が良い場合もあります。
- HEMSに対応している家電でないと省エネ効果小さい

HEMSは使用エネルギー量をモニタリング・制御して省エネに繋げる設備ですが、家電製品などがHEMSに対応していないとあまり意味がありません。
HEMSの省エネ効果を最大限に発揮したい方は、以下の設備導入も検討してみましょう。
- エアコン
- 照明機器
- ドア・窓センサー
- 温湿度センサー
- 高効率給湯器・エコキュート
- 家庭用蓄電池
- V2H※
- 電気自動車
※V2H(ブイ・ツー・エイチ):Vehicle to Homeの略称とは、電気自動車やプラグインハイブリッド車の蓄電エネルギーを家庭で利用できるように変換できる設備。
これまで使っている家電製品を継続して使用したい方は、GX志向型住宅ではなく長期優良住宅・ZEH水準住宅の方が適している可能性もあるため、建築会社に詳細をご相談ください。
埼玉県でずっと住み続けられる「省エネ住宅」を建てたい方は、設計施工実績が豊富な蓮見工務店へご相談ください。

まとめ

GX志向型住宅とは、子育てグリーン住宅支援事業の実施とともに新たに設けられた省エネ住宅で、長期優良住宅やZEH水準住宅よりも、高い省エネ性が求められます。
これからGX志向型住宅を新築する方は、認定条件とメリット・デメリットをしっかり把握しておきましょう。
デザインと性能、快適さの全てを持ち合わせた家を埼玉県で新築・リノベーションしたい方は、注文住宅の設計施工事例が豊富な「蓮見工務店」にお任せください。
