ZEHのメリットを活かす家づくり 

ZEHのメリットを活かす家づくり 

家づくりの準備段階で情報を集め始めると、ZEH、高気密・高断熱、省エネ住宅などの様々な用語が目に入るかと思います。快適でラニングコストのかからない住まいを、国や自治体の補助金を貰って建てるには、どのような計画をすべきなのでしょうか?高性能住宅であるZEHのメリットとデメリットを確認しながら、快適で省エネな住宅を建てる方法を考えてみましょう。

ZEHとは?

ZEHはNet Zero Energy Houseの略称でゼッチと呼ばれています。Net Zero Energy Houseとは、冷暖房や給湯、換気、照明など住まいに関わるエネルギー消費量と太陽光発電などで得られるエネルギー量をプラスマイナスゼロ以上にする性能を有した住宅という意味を持っています。(ここで評価するエネルギー量は一次エネルギーというものですが、内容が煩雑なので今回は説明を省略します。また、家電などによる消費エネルギーは対象外です。)

効率よくZEHを実現するためには、省エネと創エネに対する工夫が必要です。省エネでは屋根、壁、床、開口部などいわゆる外皮からの熱の出入りを抑える断熱・気密性能を高めること、太陽熱を採り入れたり遮ったりするパッシブデザインの工夫、エネルギーを無駄に使わない為の高効率な設備システムを導入などが考えられます。また創エネとしては太陽光発電やエネファームと呼ばれる燃料電池で電気エネルギーを創り出すという設備が一般的です。

参考サイト 経済産業省・資源エネルギー庁 家庭向け省エネ関連情報 省エネって何?

省エネ① 最小限のエネルギーで快適な室温を創り出せる家にする

木製デッキ越しに庭をのぞむ平屋の家

木製デッキ越しに庭をのぞむ平屋の家

日本では全国どこでも1年を通してみると、過半の期間で冷暖房が必要な地域がほとんどです。一般的に冬の暖房が必要な時期が長い地域が多く、比較的温暖な地域といわれる東京や大阪などを含むいわゆるⅥ地域においても、暖房期間は約5か月に及びます。最近では地球温暖化の影響もあり、冷暖房を必要としない中間期が短かくなり、冷房期間も3~4か月に増えてきています。

その結果、個人の家庭でのエネルギー消費量の内、冷暖房が占める割合は30%にものぼります。地球温暖化対策として、今世界中でエネルギーを節約し温室効果ガスの排出を削減する努力が求められています。家庭部門においても、エネルギー消費を抑え地球温暖化防止に貢献する取り組みが大切になっています。

その一つが最小限のエネルギーで快適な室温を創り出せる家にするという取り組みです。最小限のエネルギーで快適な室温を創り出せる家にする為には断熱性と気密性、そして日射取得・遮蔽という3つの基本性能を調えることが大切です。

外皮からの熱の流出を防ぐ断熱性

最小限のエネルギーで快適な室温を維持する為には、エアコンなどの空調設備によって調えられた温熱環境を逃がさないようにしなくてはなりません。空調機器がどんなに快適な涼温感を創り出しても、断熱性能が貧弱で熱が出入りしやすい構造だと、冬は折角温めた室内の熱が外に逃げてしまい、夏は外部の暑さが室内に伝わってしまうため、快適な環境を維持するのに莫大なエネルギーを消費してしまいます。

そのような状態にしないためには、外気と接している部分である屋根や天井、外壁及び窓や玄関ドアなどの開口部、床や基礎の断熱性を高め、熱の流出入を防ぐ必要があります。屋根や壁、床には断熱材、窓には樹脂サッシと複層ガラスやトリプルガラスを組み合わせた窓というように、外気と接している部分に熱の流出入を抑える性能を持つ部材を使うことにより断熱性能が高くなります。

この断熱性能は、UA値(外皮平均熱貫流率)という数値で表します。熱の出入りが少ないほどUA値は小さくなります。ZEHの備えるべき断熱性能はUA値0.6(Ⅵ地域)と定められています。

隙間からの熱や湿気の流出入を防ぐ気密性

家の断熱性能を上げたとしても、隙間が多いと空気の出入りが増えてしまい熱や湿気もその部分から出入りしてしまいます。具体的には床や天井と壁の継ぎ目や、ドアの建付け、窓や設備配管など開口部まわりの目に見えないような隙間からの熱や湿気の流出入です。

気密性を高めることを目的に、新築時には床や天井と壁の継ぎ目・開口部廻りに専用の気密シートを使うなどの方法で、隙間が生まれないように施工します。気密性能は断熱性能とは違い、机上で算出できるものではなく、適切な計画は勿論ですが、丁寧な施工が性能に大きく影響します。ですので、新築の家でも施工が雑であったり不備があったりすると高い性能は望めません。気密性を高める為には丁寧で優れた施工力が求められるのです。

また、窓の選び方によっても住宅の気密性は影響を受けます。引き違い窓よりも、ドレーキップ窓やFIX窓は気密性が高いというように窓の開閉方法によって気密性の高さが変わります。加えて引き違い窓の中にも、気密性の高さにこだわった窓があるなど、窓のメーカーによる気密性の高さの違いもあります。

気密性能は、施工現場での実測で得られるもので、C値(相当隙間面積)という数値で表されます。一般的にC値が1.0を切ってくると高気密住宅と呼ばれます。第三種での計画換気設備が有効に機能するには最低でも1.0以下の性能が必要ですので、先ずは1.0以下を確保しましょうという事です。最新の知見では0.7±0.2(0.5~0.9)がコストを含めて、メリットの高い数値とされています。

気密に対し特に配慮していない新築住宅のC値は2.0~5.0くらいといわれております。仮にC値を3.0とし、冬季の平均的な内外温度差12℃で、平均風速3~4m/秒という気候条件の住宅地に建つ延床面積120㎡くらいの住宅では、暖房負荷が¥3,000~¥3,500/月、程度増加します。暖房期全体では¥17,000/年程度、暖房費として電気代の負担が増える計算です。C値0.5では¥4,000/年程度なので、その差は暖房期だけで¥13,000/年にもなります。

気密性能は室内の温熱環境の快適性に関わるばかりでなく、建物の耐久性にも大きく影響します。高断熱住宅において、漏気の多い構造では内部結露が発生しやすく、柱や梁、屋根下地などの構造躯体に腐朽リスクを生じさせるからです。断熱と気密は必ずセットで考えなければならない性能です。気密測定を実施してない工務店、結露計算によるリスクの確認を行っていない設計者や工務店に依頼することは、とてもリスキーなことになります。

ただ、気密性を高めれば高めるほど、漏気による空気の入替が少なくなるので、理想的な空気環境を維持するための換気計画も並行して進めることが大切です。

施工事例

室温上昇を補う日射取得と、抑える日射遮蔽

吹抜玄関と深い軒下空間のある家

吹抜玄関と深い軒下空間のある家

断熱性と気密性は冬場の暖かさや夏場の涼しさを維持のための性能ですが、冬場に暖房エネルギーを補う日射取得、夏場の冷房エネルギーを抑える日射遮蔽も大切な要素です。日射取得の性能は、ηAH値(イータエーエイチ)、日射遮蔽の性能は、ηAC(イータエーシー)で表します。それぞれの値は、主に窓などの開口部から室内に侵入する日射熱の量を表す数値です。数値が高ければ日射熱を多く取得し、低ければ日射遮蔽率が高い事を示します。

陽射しは冬には暖かさを届けてくれるありがたい自然のエネルギーです。幅1.8m✕高さ2.0mの掃出し窓からは、電気ストーブ1台分に相当する熱を採り入れることが出来ます。一方で夏はその熱が室温を上昇させてしまいます。その為、夏に侵入する熱量を遮りながら、冬は最大限に日射熱を採り入れる為の設計や暮らし方の工夫が、最小限のエネルギーで快適な温熱環境を創ることに繋がります。

設計や暮らし方の工夫として、窓の外にすだれやオーニングなどの日除けをつける、太陽高度を考慮した軒の出幅を検討する、袖壁を設ける、窓の近くに落葉樹を植えるなどの方法があります。また、南側の窓を大きくとり日射取得ガラスを入れる、それ以外の東・西・北の窓は採光や通風の為の最小限の大きさにして日射遮蔽ガラスにする事なども、計画として大切になります。新築時には軒の深さと、窓の方角、位置、大きさ、開閉方法を決める際に、日射取得・遮蔽の効果を考えることが大切です。

参考資料 一般社団法人 住宅生産団体連合会 なるほど省エネ住宅

■ 軒のない家と軒のある家では、暮らしやすさと建物の耐用年数が変わります。また、同じ軒のある家でも軒の深さによって、軒から得られる効果が変わります。家づくりの計画中に、軒をつけるかつけないか、深い軒にするべきかという悩みを解決する為に、軒の良さと問題点について、確認していきましょう。

コラム 深い軒のある家に対する疑問を解決

■ 「省エネで快適な生活を実現するらしいけれど、高気密・高断熱住宅とは具体的にどんな家なのだろう?」住宅を新築する際に情報を集め始めると、高気密・高断熱という言葉が気になるのではないでしょうか?メリットは多そうだが、デメリットはないのだろうか?光熱費は節約できるのか?湿度対策はどうするのか?などの疑問を解決しましょう。

コラム 高気密・高断熱住宅とは?結露や夏の暑さは大丈夫?

省エネ② エネルギーを無駄に使わない為の高効率な設備システム

住まいの中には日常的に夜間は必ず毎日使う照明、季節によっては長時間使うエアコンなど使用頻度の高い電気製品がいくつかあります。これらの電気製品の使用時に消費されるエネルギー量によって、家庭で消費されるエネルギーの量が変わります。LED照明や高効率型エアコン、換気設備、節湯型水栓、節水型トイレ、高断熱浴槽、エコキュートやエコジョーズに類する高効率給湯機などを使うことによって、消費エネルギーの量を減らせます。

また、家庭で消費したエネルギーの量を手軽に確認できること、家庭内で使っている電気製品のエネルギー使用料を最適に調整することも、エネルギーの節約に繋がります。その為に、ZEHでは、ヘムス(Home Energy Management System)というホーム エネルギー マネジメント システムの設置が求められます。

参考サイト HEMS(ヘムス)って何?

創エネ 家庭で消費するだけのエネルギーを家庭で創り出す

太陽光発電搭載の長期優良住宅

太陽光発電搭載の長期優良住宅

省エネの性能に加え、ZEHには、創エネの性能が求められます。創エネとは、一般的には太陽光発電設備やエネファームと呼ばれる家庭用燃料電池設備などで、おもに電気エネルギーを家庭で創り出すことです。

施工事例

ZEHのメリットとデメリット

ZEHに限らず、家づくりの方向性にはメリットだけではなくデメリットもあります。どのような方向で家づくりをしていく場合にも、良い面だけではなく、マイナス面についても確認しておくことが大切です。

最小限のランニングコストで、快適で健康的な生活ができる家を実現することが、ZEHの最も大きなメリットではないでしょうか?家の中に温度差がなく空気環境が良い家は、快適さと共に家族の健康維持にも効果的です。そのような室内環境を維持する為に、日々莫大な費用がかかってしまったら、家計の大きな負担となります。その点、ZEHの建物は断熱・気密性能の高度化と高効率設備の採用でエネルギーの使用料を抑えると共に、エネルギーを創り出せるので、家計の負担が抑えられます。加えて停電の際にも電気が使えるという自然災害への備えにもなり、蓄電池を備えることよって電気供給事業者への接続を必要としないオフグリットという選択も可能になります。

また、補助金が利用できるというメリットもあります。現時点では公募は終了していますが、2022年からも引きつづき戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業からの補助金が出る予定です。他にも地域型住宅グリーン化事業やこどもみらい住宅支援事業補助金でもゼロエネルギー住宅に対する補助金が設定されています。

一方、ZEHのデメリットは、建築費が嵩むということです。高効率の設備機器や太陽光発電のパネルなど、住宅設備機器の導入に一般的な住宅より費用がかかります。ただ、暮らし始めてからの数十年にかかり続けるランニングコストや、温熱環境の向上にともなう健康維持による医療費の軽減など、さまざまな費用的な効果が期待できます。

もう一つのデメリットは太陽光発電の効率を上げる為や設置面積を確保する為に屋根の形状に制限が出る場合があることです。発電効率を得るために、勾配をきつくしたり、面積を確保する為に片流れの屋根にし、北側隣地に大きな影を発生させて、トラブルになるケースも出ています。

ZEHでの家づくりを検討する場合には、デメリットについても十分承知した上で、家族の家づくりにとって有効な方向性であるかどうかを十分に検討しましょう。東京都では供給戸数200棟以上のビルダーに対し、供給住宅の85%(都内の全供給戸数の60%に相当)に太陽光発電設備を設置することを義務付けとしました。住宅は通常50年先までも存在するものです。将来の脱炭素社会を見据え、今どんな家を建てるべきかをしっかりと検討することが大切です。孫子の代に負担となる様な家を残すことの無いようしたいですよね。

実際の家づくりでは、施工を依頼する工務店からのアドバイスも役立ちます。家づくりを依頼する際に、ZEHを希望している旨を伝え、アドバイスを受けながら計画を進めていきましょう。家族の暮らしに対する希望と家づくり予算を考えあわせた上で、より最適な方法についての提案があるかもしれません。

参考サイト 令和4年度環境省重点施策

参考資料 住宅の省エネ・省CO2化に向けた経済産業省 国土交通省 環境省による3省連携の取り組み

■ 家づくりには家族それぞれの予算があります。予算の範囲内で、家づくり全体のバランスを考えながら計画を進めていかなくてはなりません。予算オーバーになると、住宅ローンの借入金が増えるなど、暮らし始めてからの生活に影響が出てしまいます。注文住宅で予算オーバーを避ける為に考えておきたいことには、どのようなことがあるのでしょうか?

コラム 注文住宅で予算オーバーを避ける為に考えておきたいこと

施工事例

蓮見工務店の家づくりへの想い

注文住宅,家づくり,設計

私たち蓮見工務店は、「工務店」+「設計事務所」ならではの
手作りの家づくりときめ細かいアフターメンテナンス、
そして設計事務所として培ってきた
デザイン性、高性能な家を提供させていただきます。

「熱を集め、移し、蓄える」

「風を通し、涼を採り、熱を排出する」

「直接的な日射を避ける」 「断熱・気密性を高める」

などのパッシブデザインも積極的に取り入れ、
今まで多くの雑誌にも掲載していただきました。

快適で心地よい暮らしは、設計、性能、見た目のデザインなど、
全てのバランスで実現できます。

そして、経験豊富な職人の手によってカタチになるのです。
私たち蓮見工務店は、それらすべてにこだわり、
お客様の一棟に全力をそそいでまいります。

注文住宅やリフォーム、リノベーション、店舗などの建築を
ご検討中の方には、これまでに携わったお宅をご見学していただけます。

「木造住宅の視覚的な心地よさ、
木にしか出せない香り、温かみのある手触り」

「木の心地よさと併せて太陽の光などを取り入れた、
パッシブデザインの良さ」

を感じて頂けます。

ご希望などございましたら、お気軽にお問い合わせ下さい。

監修者情報

蓮見幸男

蓮見幸男

住宅に関するさまざまな事柄(耐震・温熱・耐久性など)を計算やシミュレーションにより可能な限り〝見える化"し、安心・快適な唯一無二の住まいをリーズナブルにお届けしたいと考えています。

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